10年前のある朝、智鶴はいつものように、神棚に一日の無事を祈っていました。
すると目の前に、十二単(ひとえ)をまとったお姫様が顔を両手で覆い隠し、悲しんで座り込んでいる姿でおいでになりました。
智鶴は、「あなたはどなたですか?」、「どうぞ、お顔をお上げになった下さい」、
「どうなさったのですか?」と尋ねましたが返事をしてくれません。
しばらくして、その姿は消えました。
次の日も同じようにおいでになられ、姿を消されました。
このお姫様の十二単の色柄はとても変わっていて、十二単の中には絣(かすり)の絵柄、一番外側に着ておられる着物は小紋と呼ばれる花柄でした。
二日間も同じ姿でおいでになるということは何か必ず意味があるはずだと思い、友人の女性に相談してみました。
すると、その友人は、「あ~、その女性は私の母親です!」と身体を少し震えさせながら答えてくれました。
「私の母親の名前は、十二単(ひとえ)から頂いて、『ひとえ』と名付けられたと聞いています。
絣(かすり)の着物は普段着でよく着ていました。
小紋の着物は、母親が亡くなったときに着せてあげた着物です」
と話してくれました。
亡き母親は、十二単の着物をまとったお姫様の姿で智鶴の前に現れることによって、
娘への思い、そして、娘を見守り続けていること、そして智鶴に対して娘をよろしくお願いしますと伝えることに一生懸命だったのだということがわかりました。
そして、必ず娘に伝わることを知っていた、
逆に言えば、智鶴は亡き母親から選ばれたメッセンジャーだということになります。
友人の母親は、亡くなってから20年が経っていたんですよ。それでもメッセージを送ってきてくれたのです。
肉体はこの世から無くなっても、「思い」は残っているものなのだということを体験した出来事でした。

